やあ。
今日は1円である本を買ったんだ。
30年前の本なんだけどね。
「へぇ、なんだい黒髪少女。この化石みたいなのは。こんな古い本に価値があるのかい?」
価値はあるよ。
これは30年前にアメリカでベストセラーになった本―――の日本語訳だ。
たった1円で売ってて良い買物したと思ってる。中古だけど状態も綺麗だ。
「それで黒髪少女。本は面白かったの?」
それが・・・本を読むどころじゃないんだ。
聞いてくれ。
この本に挟んであった30年前のモノが気になってしょうがなくて困ってるんだ。
この本を読んで――まず最初に出てきたのがコレだ。
新潮社の新刊案内――1984年4月号だ。
なんと30年前だぜ? しかも超綺麗なんだ。
この新刊案内を開いてみると
井上ひさしさんの「井上ひさし全芝居」
「プロ野球グラフィティ’84」などが案内されてた。時代を感じさせるね。
「ふぅ~ん、僕はあんまり興味ないよ黒髪少女。 そんなことより”HKT48トンコツ魔法少女学院”の再放送を観ていいかな。病院の肝試しに行く回なんだ」
待つんだ、ここからが本題だから。
問題は次に出てきた方なんだ。
読み進めること数十ページ――もう1枚の奇妙な紙が挟んであるのを発見した。
これだ。
「サークルショップ たんぽぽ」 の案内
時代を感じさせる冊子が挟んであった。とても綺麗な状態で。
平成っぽさはない――確実に昭和のものだ。
何故こんなものが挟んであるのか?
冒頭にも説明した通りこれは古本なんだ。
恐らく僕の前の持ち主――つまり約二十数年前の持ち主が「しおり」に使っていたんだと思う。
裏面を見て驚いた。
「サークルショップたんぽぽ」へのアクセスマップが記載されていた。
住所は――福岡市中央区天神3丁目――
福岡市・・・中央区・・・天神・・・。
どこかで聞いたことがあるワードが並んでいる。
福岡市とくれば、そうHKT48だ。
そして天神というのは、名曲”HKT48″の歌詞にもある「天神コア」の天神ではないのか?
つまりこの冊子は――
今から約30年近く前に・・・福岡の天神に実在した――店舗の案内なんだ。
こんな冊子を「しおり」がわりに挟んでいた前の持ち主は、天神の近くに住んでいたのかもしれない。
僕はこの時代を感じさせる「サークルショップたんぽぽ」の店舗案内をしばらく眺めたあと、いったん机の上に置いて読書を再開した。
だけど気になってしまう。
というのも僕は歴史が好きなんだ。昔のことに思いを馳せるのが好きというべきか。
例えば枕草子なんてずっと読んでいられるし――過去のことに思いを馳せるのが堪らなく好きなんだ。
だから30年前に実在した「サークルショップたんぽぽ」が――どんな街並みのどんな店構えで――どんなお客が来て――そこで暮らしていた当時の人々が気になってしょうがない。
そこで読書は一旦止めて調べることにしたんだ。
「サークルショップたんぽぽ」を。
どのように調べたかって?
僕はかつて地理学を履修していた時に学んだことがある。
それはGoogle+ストリートビューの偉大さだ。
これを使えば世界中に旅行できる。
たんぽぽの店舗案内に記載してある住所は「福岡市中央区天神3丁目8-2」だ。
それをGoogle+ストリートビューに入力すると――すぐさま周辺地図が表示される。
サークルショップたんぽぽの「福岡県福岡市中央区天神3丁目8-2」は
HKT48劇場のあるホークスタウンモール「福岡県福岡市中央区地行浜2−2−1」から近い。
およそ直線9500フィート(2895.6m)
2.9kmだ。とても近いね。
しかも「たんぽぽ」と「HKT48劇場」の経度がほぼ同じなんだ。東西に一直線の位置にある。なんだか奇妙だ。
それでは約30年前の店舗案内のアクセスマップと比べてみよう。
キーとなるのが、親不孝通り、ホテルアーク、安国寺 だ。
現代の地図
安国寺。
現代にもあった。
時代の変化と共に街並みが変わったとしても、お寺はたった30年程度じゃ変わらないだろう。
ホテルアーク
なんとこのホテルも現代に実在していた!
しかし異変に気が付く。
約30年前の地図では、ホテルアークは安国寺の西にあったはずだ。
現代の地図では安国寺の北になっている。
ここで仮説⇒ ホテルアークは移転した。
(小規模だった旧館から、新たに大規模な新館を建設し、そちらに移転した可能性が高い)
それでは実際にGoogleストリートビューの仮想世界を旅してみる。
Googleストリートビューはこの現実世界がほ仮想的に再現されている。
しかも自由に移動できるんだ。
だけど・・・いきなり迷子になってしまった。
見なれない土地に飛ばされたので当然かもしれない。ここはどこだ。
やたら目立つアークホテルは発見した。
しかし――やはり30年前の地図と地形が違う。
現代のアークホテルは恐ろしく巨大なホテルになっていた。
周りを探しても天国寺がない。
混乱してきた。
電子の仮想世界を彷徨うこと30分、ようやくキーポイントを発見した。
「親不孝通り」だ。
こんな嘘みたいな名前が本当にあるのか疑わしかったが実在した。
ただし現代では親富行通りに改名されていた。 不を富にしたようだ。
右の看板の「あんみつ姫」って何だろう。うまそう。
30年前のアクセスマップによると、親不孝通りを東に進むと、安国寺があるはず。
見つけた。安国寺――を東側から見た風景。
30年前の地図によると、親不孝通りと安国寺を繋ぐ道に「サークルショップたんぽぽ」があるはずだ。
ここが、親不孝通りと安国寺を繋ぐ道。
「サークルショップたんぽぽ」のアクセスマップが示していた場所には、
広い駐車場と、民家と、マンションしかない。
ない。
現代に「サークルショップたんぽぽ」は無くなっていた。
しかし今から30年には――確かに福岡天神のこの場所に――実在していたはずなんだ。
「サークルショップたんぽぽ」が。
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